Review | 名建築を訪ねて 建築家・新堀和巳の考察

建築物に秘められた美しさ、上質さその背景にある理由を紐解いていく

私がこれまで携わってきた建築物や世の中にある有名建築物を見ながら、素材の在り方とはどういうものなのか、デザインを考えるにあたってのポイントとなる部分はどこなのかなどを、私なりの考えで解説・ご紹介したいと思います。まずその前に、私が考える“上質な建物にあるべき条件”をお伝えしましょう。それは3つの要素からなります。「素材」「環境」「見切り」です。この3つの要素を主な切り口にして、さまざまな建築物を見ていきたいと思います。

素材=光
素材を選ぶとき、木や石という”材料”を考えがちですが、重要なのは、材料が持つ光の拡散をどう捉えるかということにあります。たとえば漆喰は乱反射が強く、光が細かくなります。つまり「どのように目に映るか」を考えることが、その空間にあった素材選びにおいて大切なのです。色よりも、まず素材表面の粒子がどうなのか、それが空間全体と合っているのかを考察することで、バランスが良く、心地いい空間が生まれます。素材=光、と考えるといいでしょう。
環境=時間
次に環境ですが、まさにその言葉の通り、建物がどんな環境の中に建つのかを考えることが大切となります。四季がどのように移ろい、どのような風が流れているのかを調べ、設計に生かすのです。また建物は経年変化しますから、その変化する建物に一番馴染む素材を選び抜くことも重要。最適なのは地元で採れるものになります。地元の木や石を用いてつくられた建物は、長い年月の中でその土地にしっくりと馴染み、ひとつの風景のような味わいが出るものです。私は、環境=風、と捉えています。
見切り=時間
最後に見切りです。見切りとは、構造物あるいは、材料などの最終端のおさまり具合いのこと。私が若い頃、恩師によく言われましたのが、“開口部の見切り”“地面と壁の見切り”“屋根と空の見切り”の3つの見切りを大切にすることです。そこを考えて、考えて、考え抜くことで建物は必ずきれいになるのです。朝、昼、夜によって見切りの見え方は変わってきますから、見切り=時間、といえるのではないでしょうか。
CASE.01 二期倶楽部
地産地消の概念を設計に生かすことで、自然の中に溶け込む心地よいホテルが誕生した
CASE.02 軽井沢の山荘B
軽井沢という地だからこそ生まれた自然を見事に取り込む大胆かつ繊細な設計
CASE.03 ちひろのアトリエ
無駄をそぎ落とし、豊かさを手に入れるコンパクト住宅の理想形がここにある
CASE.04 Tの家
山々の頂を望む高台に佇む建築家の大胆な発想を散りばめた熟考された住まいる
CASE.05 田中本家博物館
日本人の美意識と機能性に裏打ちされた華やかで激動の江戸時代を生き抜いた豪商の館
CASE.06 碌山美術館
精神世界でつながった想いが生み出した建築の根幹を表現してできた美術館
CASE.07 曽根原家住宅
住まう人、訪れる人に心地よい空間づくり空間の切り分けと光の明度が生み出す豊かな暮らし
CASE.08 旧白洲邸(武相荘)
自らの美意識を空間に刻み込んでいく住まう人がとことん愉しむDIYの家
CASE.09 御殿場・とらや工房
短辺方向を連続的に立体化するシンプルへの思い切りが見せる美しさ
CASE.10 東山旧岸邸
私的と公的の狭間の中で生まれた、デザインの合理性を追求した住まい
CASE.11 中川一政美術館
コンパクトな敷地の中に広がる大空間と一筆書きの動線が光る美術館
CASE.12 ヴォーリズ六甲山荘
シンプルを追求する中で生まれる独自性デザイン性と機能美がミックスした名建築
CASE.13 ヨドコウ迎賓館
帝国ホテルで採用された大谷石を用いた重厚さと親近感を感じさせるライトの代表作
CASE.14 猪熊弦一郎現代美術館
素材、構造に徹底的にこだわり、デザインを追求。モダニズム建築に見る、美への探究心

有限会社新堀和巳建築設計室
代表取締役 一級建築士

新堀 和巳

渡辺明設計事務所にて活躍後、独立。兵庫県安心住宅設計競技「システム提案部門特別優秀賞」受賞、あたたかな住空間デザインコンペ「LDKリフォーム賞」受賞など、数多くの受賞歴を持つ。住生活が第三の皮膚に相当するというバウビオロギー(建築生物学)をベースに、住まいづくりを進めている。