Interview | ディテールを語る

作品 「東京都K邸」

設計・デザインの細部にこだわり、
生み出されたフレンチシックな
上質な住空間

ミルクリーク・デザイン・オフィス 雨宮知洋

コの字の住まいにすることで、
開放感とプライバシー&セキュリティを確保

クラシックで素朴な味わいを醸し出す、フレンチスタイルの佇まい。まるで昔からそこに建っていたかのように街並みに溶け込む美しいその姿には、オーナーであるKさまの想いをしっかりと汲み取り、形にする工夫が数多く散りばめられている。意匠性を追い求めると同時に、プライバシーを確保しながらも、開放的な住まいにするためにはどうすればいいか。一級建築士でありながら、インテリアコーディネーターとしての感性・ノウハウを持つ雨宮氏ならではのアイデアにより、K氏邸は高い完成度、高い満足度を生み出すこととなった。

「それまでは、高層マンションの最上階にお住まいでした。ですから新しい家にも開放感を求めておられたのです。でもその一方で、高層階から今度はいわゆる地上にお住まいになることで、プライバシー面やセキュリティ面でとても不安を抱いていらっしゃったのですね。いかに安心して暮らせ、心地よく落ち着いた雰囲気の中で過ごせるか。それを考え抜き、ご提案させていただきました」と雨宮氏は述懐する。
ほぼ正方形の敷地という利点を生かし、雨宮氏は“コの字”の建物形状によって問題解決が図れないかと考えた。道路に面した部分は開口部を控えめにし、道路と反対側に中庭を設けて、それを取り囲むように居室を配置する。そうすれば明るい自然光も空間に取り込め、居室から庭に続くことで開放感も手にできる。さらにプライバシーもしっかりと確保できる。

「普段、一番そこに佇む時間が長いキッチンからは、リビング・ダイニング、そして中庭というつながりある間取りにすることで、家事をしながらもリビング・ダイニングで遊ぶお子さまの姿が見え、さらにきれいな庭も眺められます。コの字なら、希望される安心で心地よい住まいにできると直感的にひらめいたのです」。
「さらに実はKさまには、将来、自室の一部を利用してショップを開きたいという夢がおありでした。そこで道路に面した居室は洋服や小物をつくるための本格的なアトリエにするプランを立てたのです。気持ちよく創作活動ができるようにと、床を下げて開放感を高めましたが、そうすることで地面と床とがフラットになり、将来、改装しやすいようにしてあります。道路側からLDKを離すこのゾーニングは、プライバシーにもより配慮できるものと考えました」。

アンティークショップに自ら足を運び、
オーナーの憧れを叶える

このような開放感とプライバシー・セキュリティを確保することに加え、Kさまはデザインに対して強いこだわりを持っていたそうだ。見た目の美しさはもちろんのこと、そこに流れる空気感も上質であること。そこで雨宮氏は、“フレンチスタイルと歳月を重ねたような風合いのある素材使い”をコンセプトに置き、きめ細やかな提案を重ねていく。

「Kさまは、フレンチデザインがとてもお好きで、造詣も深かった。たとえばエントランスホールとリビングを隔てる扉は、フランスのアンティーク。ご自身で探し当てられた静岡のアンティークショップに私も足を運んで、実際の使用に耐えられるかを検証しました。反りを防ぐために扉の枠に鉄をはめ込み、ドアノブがなかったので、これは別のアンティークショップで見つけたものを取りつけました。この扉はとても大きなサイズでしたから、それに合わせて設計をしました」と雨宮氏。さらに寝室の洗面コーナーに取り付けたアンティークのキャビネットに、照明をつけて欲しいというオーダーに対し、職人と相談を重ねながら難度の高い造作を実施。どこに行けば、どのようなショップがあるか。どのような設計や造作にすれば要望を叶えることができるか。それらの情報・ノウハウを多く持つ雨宮氏ならではの提案・対応力が、そこかしこに光る。

「お子さまが2人いらっしゃるのですが、Kさまの感性を受け継いだのか、自分の部屋はそれぞれ青、緑をモチーフにした部屋にしたいと。フランス製壁クロスやファブリックをテーマカラーで整え、扉も内側はそれぞれの色に塗りました。廊下側はその空間に合った色にしていますが、こういった柔軟性が輸入住宅・輸入素材のいいところですね」。

また、全館空調システムを導入し、無垢材の床や木製サッシなどを採用することで、どの部屋も快適で、やさしい空気感に包まれた住まいに仕上がった。デザインや間取りも心に描いていた通りのものになり、毎日が楽しく、幸せな気分で暮らせていると、Kさまの評価もとても高いと雨宮氏。普遍的なヨーロッパデザインが醸し出す豊かさは、このような感性が光るKさまと住まいづくりの豊富なノウハウを持つ設計士の共同作業により、生み出されていくものなのであろう。

ミルクリーク・デザイン・オフィス 雨宮知洋

ミルクリーク・デザイン・オフィス 雨宮知洋

建築設計事務所で約9年間、経験を積み、東急ホームズへ入社。埼玉営業部、東京営業部を経て現在に至る。個人宅から賃貸物件まで幅広く手掛け、年月が経つほどに味わい深くなる美しいフォルムの住まいを数多く生み出している。東急ホームズへの転職を決めた理由は、「設計事務所では設計しかできない。ハウスメーカーなら工事内容や予算にまで関わりながら、お客様の要望を満たす提案ができる」からだそう。事実、同氏の総合プロデュース力は高い評価を受け、いわゆる“邸宅”案件を対応する「プレステージオフィス」の担当設計者でもある。デンマーク人設計士の祖父を持ち、北欧やヨーロッパのデザインの感性を感覚的に持ち合わせていることが、本物を知るお客様の琴線に触れるのだろう。

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