Interview | ディテールを語る

作品「立川モデルハウス」

『空に開く』という斬新な発想が生み出した、和とモダンが融合する、やすらぎの空間。

商品企画・構造開発グループ デザインチーム  藤原広行

箱の積み重ねから美を創作する。デザインの基本から生まれた都市型住宅の可能性

必要な要素を残し、無駄をそぎ落とすこと。そうすることで住まいはシルエットとしても、機能としても美しさを発揮する。スクエアな立方体を基本とし、空間と空間とのつながりを追求した住友林業の「BF GranSQUARE」。躯体の強さと高い設計力が織りなす構造の美、内にも外にも広がる空間の美、木や石、紙などを巧みに採り入れる素材の美。この3つの美をかけ合わせることで、上質を知る人の心を打つモダンデザインの住まいが完成する。

今回ご紹介する「立川第一展示場」(東京都立川市)は、藤原広行氏の設計によるもの。「BF GranSQUARE」シリーズのモデルハウスは駒沢第一展示場(東京都世田谷区)、八事展示場(愛知県名古屋市)に展開されているが、ここ立川第一展示場は、それらとはまた違った独自の発想により、住まう人の心地よさを醸成しているのである。

「駒沢は、中庭を中心とした『インサイド』の考え方で設計されています。一方、八事は外部空間を箱の周辺で考え、複数の箱同士の関係で内・外をつなげる『アウトサイド』。そこで今回の立川では、『アップサイド』をメインテーマとして掲げました。空に向け、上に開くことで開放感のある快適な住まいを目指したのです」と藤原氏。

単一の立方体を敷地に置くことからエスキース(下絵)を描き始めた藤原氏。何度もやり直すうちに、そこに快適性を生み出す大きな可能性、面白さに気づく。それは箱がひとつの住空間として成立しているため屋根伏を考慮することなく、平面を自由に構成することができるということ。そのことにより、東西南北に開いた4つのバルコニーが生まれたのだった。

「2階の南側には、上部に吹き抜けを有する広々としたバルコニーが、3階の西側には広い植栽帯の中にベンチも設けたくつろぎの空間、東側には和の庭園が誕生しました。さらにペントハウスの北側には、眺めのいい空中庭園をデザインすることができたのですね。都市型住宅の場合、周辺環境に制約がありますから、東西南北どの方向でもアップサイドを生み出せることは大きな魅力です。また、東西南北に開くことにより時間軸で違った表情の景色が楽しめますから、暮らしの豊かさに厚みが出ると感じました」。

それぞれ表情や役割の違う4つのバルコニーが、暮らしを豊かに彩る

2階部分が最大1820㎜もオーバーハングした、立体的なデザインが印象的なフォルム。そのオーバーハングを利用して、1階リビングとつながるように設えられたデッキスペースは、周囲を囲む植栽や石などで、まるで森の中にいるかのような心地よさを醸し出している。軒天には杉板を用い、外壁の一部には縦・横のスクラッチが印象的なタイルを採用。玄関右には袖壁を設け、ファサードのバランスを整えるデザイン的工夫も施した。

「2階をせり出したことで浮遊感が生まれましたが、安定感も出すためにタイル面を3階まで串刺しにしています。また、モダンな佇まいの中にも木のぬくもりが感じられる住まいにするために、軒天の杉板はリビング天井と揃え、内・外とのつながりも演出しました」。

『海外生活が長かったご家族が、改めて日本文化の素晴らしさに気づき、それを意識的に織り込んだモダン住宅。』このようなイメージで仕上げられた空間は、吉祥紋様が随所に散りばめられた美しくも、どこか懐かしく、心落ち着くデザイン・インテリアが特徴。チェリーの無垢床により、やさしげな雰囲気に包まれた約17帖のリビング・ダイニングは、大開口のサッシから流れ込む光や風、植栽によって帖数以上の開放感がある。

「壁面収納やダイニングテーブル・キッチンが横に一直線に伸びているというのも、広さを感じさせる要素のひとつ。オーク材の収納に対し、キッチンに少しキャラクターの強いオリーブアッシュ材を合わせたことで、豊かな表情と奥行き感が表せたと思っています」。

2階は家族だけのセカンドリビングという発想で、寝室や子ども部屋、ファミリーコーナーを配している。もちろん南側には、前述の広々としたバルコニーが。そこは吹き抜けであることから背の高い植栽を置くことができ、緑に包まれたプライバシーが守られる心地よい暮らしが担保されている。

「3階は、西庭を眺めながら家族や気の置けない友人たちと愉快な時間を楽しめる、堀座卓を用意しました。目線が低くなることで西庭の空がより広く、高くなり、心やすらぐ空間に仕上がったと思います」。さらに3階には茶室をイメージした和室と坪庭を、上階にはペントハウスを設けている。

住まいのどの層にも空がある。都会の中で季節を味わい、気候を感じることができるこの空は、上質な暮らしをもたらす大切なエレメント。そのエレメントを、箱を積み重ね、巧みなバランスでスライドさせることで生み出した藤原氏の手腕は、見事という他ない。

商品企画・構造開発グループ デザインチーム  藤原広行

商品企画・構造開発グループ デザインチーム 藤原広行

大学卒業後、大手ハウスメーカーに就職し、営業および設計で活躍。社内コンペで優秀賞を獲得するなど、トップクラスの実績を積み重ねる。その後、転職、商品開発部へ。42歳より3年連続グッドデザイン賞受賞、45歳で住友林業に入社し、現在に至る。これまでの経歴の中で、80棟を超える展示場のデザインを手掛けてきた。「美しいデザインには、必ずその中に整然とした理屈がある」というものが藤原氏のポリシー。フランク・ロイド・ライトを敬愛し、住まいの内と外とのつながりを大事にしながら設計に向かう。住友林業らしい木を生かした美しい住まいを追求しながらも、いい意味で想像を裏切る“住友林業らしくない”デザイン・設計を模索する日々を送る。

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