Interview | ディテールを語る

作品 「八事モデルハウス 」

自然美と伝統美と斬新な発想
本物を求める人を魅了する、
上質な住まい。

マスターデザイナー 遠藤英雄

プライバシーの確保と開放感を併せ持つ、
豊かなやすらぎを生みだすボックス型デザイン

東海3県の中でも、高級住宅地としてひときわ名高い名古屋市の八事エリア。その地に建つ住友林業の「八事モデルハウス」は、まるでミュージアムのようなシャープで美しい佇まいが特徴だ。この住まいを設計したのが遠藤英雄氏。住友林業に在籍する700名を超える設計担当者の中から選ばれたトップクリエイターによって結成される、「建築デザイン室」のマスターデザイナーである。
この建築デザイン室は、こだわりの強いお客様のご要望にも十分応えるために誕生した、住宅建築に関する精鋭集団である。住友林業では「邸宅設計プロジェクト」と銘打って、彼ら建築デザイン室を中心とした建築士の豊富な経験と発想を活かしてお客様の夢やこだわりを具現化している。

邸宅設計プロジェクトの一環として誕生した八事モデルハウスは、2015年度グッドデザイン賞を受賞した商品「BF GranSQUARE(ビーエフ グランスクエア)」シリーズの建物であり、高い耐震性とお客様の感性に響く豊かな空間デザインを両立した、まさに「邸宅」と呼ぶにふさわしいモデルハウスとなっている。

「八事モデルハウスはスクエアなボックス型で、多くのお客様が抱いておられる住友林業の“和のイメージ”とは対極のフォルムをしています。ここを訪れる方々に新鮮な驚きを感じていただきたいと考え、デザインしました」と遠藤氏。「北側に面するファサード、そして強い陽射しを受ける西側には、プライバシーの確保や防犯、快適な住環境を担保する観点から、窓を設けていません。その一方で、南側は開口部をできる限り広く取り、庭木と一体になった心地よく明るい光を住空間にたっぷりと採り入れ、四季の移ろいも感じられるような設計としています。正面はタイル貼りと左官の掻き落とし仕上げの外壁にすることで、シンプルさの中に味わい深さをプラスし、南面はサッシをブラックに塗装することで表情にメリハリを付け、高級感を演出しています」。

玄関ホールからリビングに進むにつれ、光のグラデーションが徐々に明るくなり、やがて体全体を心地よい自然光が包み込んでくれる。リビングの天井高は2.8m。18畳強の開放的な空間は、美しく輝くマホガニーの無垢の床と相まって、住まう人に上質なやすらぎを届けてくれる。
「大空間を実現し、設計自由度が高いBF(ビッグフレーム)構法を採用していますので、このような伸びやかなリビングをデザインすることができるのです。この広さが確保できることで家具が映えてきます。単に高級なものを配置するだけでは“上質さ”は生まれません。空間の高さや広さ、用いる素材、そして家具やファブリック等のコーディネートなど、すべてがバランスよく整ってこそ、本物の豊かさを享受することができると、私は考えています」と遠藤氏は語ってくれた。

使いやすさを追求し、住まいの確かさを引き出し、
美しさを奏でる

リビングとキッチンの間には、来客があった時に家事をしている姿が見えないように目隠しになる左官の壁を設け、アイランドキッチンやバックセット収納もしつらえた。家電製品を隠せる工夫も施している。またサッシやダイニングの壁には、マホガニーと空間が美しく調和するブラックカラーを採用。照明や絵画にもこだわるなど、暮らしやすい機能性とデザイン性を見事に融合させている。
「左官壁は、挾土秀平(はさど しゅうへい)」氏による手業の仕事ですし、照明や絵画もアーティストに依頼して、このモデルハウスのためにつくっていただきました。また和室の引き戸には、和紙に漆を塗り込めた素材を用いるなど、日本の伝統技術や伝統美というものも積極的に取り入れています」。

2階には、家族のコミュニケーションを深めたり、読書などを楽しむファミリールームを中心にして、マスターベッドルームや子ども部屋、バスルーム、ユーティリティスペースなどをレイアウト。南側の大開口のサッシによる明るさはもちろんだが、北側にも奥行き1間のバルコニーを設け、プライバシーを守りながらも反射光によってやわらかな自然光が住空間に広がる仕掛けも施されるなど、住まいのそこかしこにマスターデザイナーならではのアイデアが散りばめられている。

「上質な住まいといえば、きらびやかなもの、格好いいスタイルをイメージしがちですが、それが強すぎてしまうと、実際に暮らしたときにやすらぎが感じられにくくなってしまいます。さらに、使い勝手にも悪い影響を与えてしまいます。私は設計するにあたり、使いやすさを第一に考えるとともに、施工の容易さや手入れのし易さもしっかりと考慮していきます。この2つが掛け算されたとき、“美しい住まい”は誕生する。そういう信念を持って、この仕事に向かっています」と遠藤氏。
八事モデルハウスを訪れる方々の多くが、「住友林業でも、こんな家が建てられるなんて思っていなかった」と語られるそうだ。住友林業への厚い信頼と安心感に、予想を超えるデザインとアイデアをプラスする。世界で唯ひとつの本物の邸宅は、遠藤氏をはじめとする建築デザイン室によって、完成へと導かれていくのである。

マスターデザイナー 遠藤英雄

建築デザイン室 マスターデザイナー 遠藤英雄

住友林業に入社以来、数多くの住宅設計業務に携わる。2009年度には、同社社内デザインコンペにて最優秀賞を獲得。その高いデザイン・設計力が評価され、建築デザイン室のマスターデザイナーとして現在に至る。
設計をするうえで大切にしていることは、お客様の思いをしっかりと聞きだすこと。決して自分よがりな提案になることなく、要望をできる限り実現するアイデアを組み入れることに注力している。モダニズム建築の旗手、谷口吉生(たにぐち よしお)氏や堀部安嗣(ほりべ やすし)氏に大きな影響を受ける。

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