Interview

設計思想を語る

流行とトレンドの違いを認識することが、
長く愛せる空間を生み出す秘訣だと思います。

建築デザイン室 インテリアコーディネーター 江波戸 浩子

家族の目を盗んで、空間を自分流にアレンジしていった日々。

インテリアは、子どもの頃から大好きでした。自分の部屋を与えられたことをきっかけに、興味を持ち始めたように思います。お気に入りのカーテンやベッドカバーを買ってきては取り替えたり、机の位置を変えてみたり、人形の位置をアレンジしたり…。そんなふうに楽しんでいました。その後、たまたま祖母と私が一緒に暮らすことになり、本格的にインテリアが興味から欲求に変わりました。祖母は1階、私は2階というシェアの仕方になり、私はそれをいいことに、2階を自由にコーディネートし始めます。壁も天井も好きな色のペンキで塗って、床は別の素材を用意して敷き、ドアも取り外して開放感を演出。かなり大胆なことをやっていました。本当は壁も抜きたかったのですけれども、さすがにそれは断念しました(笑)。
今思うと、これは貴重な経験でした。壁や床をアレンジする中で気づいたのです。いくらゴージャスな家具やファブリックを用意しても、空間をきちんと設えておかないと、お気に入りの部屋には成り得ないということに。だから私のインテリアコーディネートは、少し建築的な要素が強いかも知れません。単に壁紙だ、ファブリック、照明、といった範囲ではなく、空間全体を建築士とともに考えていくスタンスを好みます。
日本は新築文化ですが、ヨーロッパなどはリノベーションを重ね、住まいを何代にもわたって受け継いでいきます。住まう人の個性をその時々に反映し、素敵な内装をつくりあげていくわけですが、そもそも古くなっても古さを感じさせない、経年変化を味わいとして楽しめる空間だからこそ、そんな個性も生きてくるのだと思うのです。そこから学べることは、家具が素敵だからお洒落なのではなく、その空間に対し、どんな家具を置いても素敵に感じられるような壁の仕上げであったり、形のつくり方であったり、色の入れ方をしていく大切さ。素材感を丁寧に扱い、それら全体をバランスよくまとめていくことが、私のコーディネートの原点だと考えています。
それにプラスして重要視していることがあります。これは先ほど述べたヨーロッパの家に飽きがこない理由に当てはまると思いますが、「流行」と「トレンド」を見誤ることなく、コーディネートするということです。私は、流行とは一過性のものであり、トレンドとは時代の移り変わりだと捉えています。今、流行している家具をチョイスすれば、その一瞬は素敵に感じるかも知れませんが、すぐに飽きが来てしまう。トレンドは時代の移り変わりであり、その本質は“受け継がれ続けている本物”です。それをしっかりと見極め、エッセンスとして加えながら全体調和を図ることを心がけるようにしています。

趣味も仕事も、目に見える形で成果があらわれることに魅力を感じます。

これまで手掛けたプロジェクトの中で、特に思い出深く勉強させて頂いたのが、アメリカ人のご主人と日本人の奥様のご自宅コーディネートをお手伝いしたときです。アメリカでは住まいづくりをするにあたっては、まずインテリアコーディネーターに相談するとおっしゃり、私にも同様に、水栓やタイルなどの細かな部分から空間の全体調和に至るまで、意見に耳を傾けてくださいました。希望された欧米スタイル・デザインは採り入れながら、そこにオリエンタルな要素もプラス。結果としてとても満足していただきました。うれしいことに私たち営業、建築士、インテリアコーディネーターといった“チーム”に大きな信頼を寄せていただいて、別荘も任せてもらうことに。このプロジェクトは、社内デザインコンペの最優秀賞を受賞することが出来ました。
インテリアコーディネートという仕事自体がそうなのですが、私は“何かを形にする”とこが大好きなようです。自分がコツコツ積み上げたものが成果となってあらわれる。その過程も楽しめますし、形になったときはすごくうれしい。
プライベートでも、数年前から始めたウエイトトレーニングは運動不足がきっかけだったのですが短時間でより高いパフォーマンスが欲しくて、パーソナルトレーナーをつけました。トレーナーが作ってくれたメニューは、苦しいときもあるのですが、それを乗り越えていくとやはり必ず成果が出るのですね。
少し話は変わりますが、例えば、私は毎月ネイルサロンへ行きます。ネイルをするのかというと“気分がよくなる”から。人は時計やアクセサリーを身につけますが、極端に言えばそういうものを身につける必要なんてないわけです。でも、なぜ身につけるかと言えば、晴れやかな気持ちになるからです。その晴れやかな気持ちが日常となり、それが当たり前にすらなります。コーディネートするにあたっては、そんなちょっとした気分がよくなることを空間にプラスαしていけたらいいなと、いつも考えています。プラスαがあれば家が大好きなりますし、暮らしが楽しくなる。人生そのものが彩られていくような空間を、これからも演出し続けていきたいと思います。

建築デザイン室 インテリアコーディネーター 江波戸 浩子

建築デザイン室 インテリアコーディネーター 江波戸 浩子

入社後、住宅本部東日本住宅事業部 東京住宅営業部設計Gに所属。インテリアコーディネーターとして、日常にプラスαの喜びをもたらす提案を行う。その後、キャリアを重ね、2015年9月に住宅事業本部建築デザイン室へ異動。2007年、2009年、2012年に全国インテリア部門業績優秀賞第1位を獲得。デザインコンペでは、2009年、2011年に優秀賞を手にしている。

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