Interview | ディテールを語る

作品「TBS渋谷展示場 FREX 4階モデル」

外部環境を見極め、外に閉じて内に開く
賃貸併用4階建てという、
賢くて心地よい住まい方

一級建築士 海老沢陽平

さまざまな制約の中にあっても、
快適さを手にするためのアイデア

都市に暮らす場合、郊外のそれと比べると、敷地条件やその周辺環境に大きな制約を抱えることが多い。限られたスペースの中で、いかに快適に暮らし続けるか。住宅が密集する中で、いかに光や風を取り込み、プライバシーも確保するか。そんな問題に長年にわたり取り組み続けてきたヘーベルハウスでお馴染みの旭化成ホームズは、これまでさまざまな“答え”を私たちに示してきてくれた。そして2013年、TBS渋谷展示場に誕生した4階モデル。賃貸や店舗併用をはじめ、「2.5世帯」など、ひとつの住まいに多様な都市の暮らし方を提案した住宅だ。この住まいを設計した同社の海老沢陽平氏に、コンセプトや快適な都市生活を送るための工夫点などを伺った。

「まず特徴的なのが外観フォルムです。この建物は、1階道路側にはオープンなカフェスペース、奥は賃貸とし、都市部中心地に建てる想定で設計しているため、“外に閉じて内に開く”設計がベースとなっています。ですから外からはほとんど窓が見えないデザインになっているのですね。建物の両側に垂直の袖壁を設け、防火壁の役割を持ちながら、プライバシーの確保も果たしています。意匠性と機能性を兼ね備えた袖壁を設けることでシャッターをつけずに大きな窓を採用することができるので、開放的な室内環境を生み出すことにも成功しています」。

この4階モデルは、1階は店舗と賃貸スペース。2階から4階が住居の提案となっている。2階はハイスタイルなインテリアを基調とした子世帯スペース。3階は家族みんなが使えるスペースと同居する姉が暮らす部屋を、そして4階には木のぬくもりを感じるウッディモダンを基調とした親世帯スペースを用意している。

「賃貸スペースにおける工夫ですが、都市において賃貸ニーズは増えているものの、いわゆるこれまでの蜂の巣型の部屋では借り手がつきにくいのが現状です。そこでヘーベルハウスでは、賃貸スペースにおいても、ペットと暮らせる部屋や女性限定などのニーズの高まりを受けたプラスαの価値提案を行っています。もちろん視線への配慮、心地よさなど、外部環境を意識した設計は、賃貸スペースも居住スペースも同様です」。

見せていいもの、見せてはいけないもの。
その取捨選択が重要

「2階の子世帯ですが、都市型住宅はどうしても敷地が限られがちですので、広く見せる工夫を盛り込んでいます。道路側はプライバシーを確保しながら、天空光による明るさと開放感を手にできる中庭を設け、南側は大きな窓を設けて視界の広がりを演出しました。また、吹き抜けは広さがあまり取れない分、壁の一部を鏡にして伸びやかさが感じられるように仕上げています。枠を極力排除したり、映り込む窓の並び方が一定に見えるようにすることで鏡と認識しないようにするなど、ディテールにもこだわっています。天井高もあえて40センチ低く抑え、開放感と落ち着きのバランスがいい縦と横の比率調整を行っています」。

空間はできる限りオープンにし、寝室や子ども部屋の扉も引き戸にして、シーンに応じて開け閉めができるように工夫されている。また引き戸はウッドシャッターとなっており、羽根の角度を変えることでリビング・ダイニングと居室との“距離感”を調整可能とした。3階は2.5世帯を想定した姉の部屋を配すると同時に、「みんなの図書館」と題したライブラリースペースを用意し、家族の交差点としてコミュニケーションを深められる仕掛けを施している。そして4階の親世帯。

「4階のコンセプトは、天空平屋生活。ナラの無垢材をふんだんに用い、オープンエアのマルチスペースである“そらのま”を設けることで、ナチュラルさを感じられる空間に仕上げています。また平屋といっても空間が単調にならないように、天井高に変化をつけています。リビングはダウンフロアにしていますので2.8mと伸びやか。ダイニングが2.4m、そして書斎は、“こもり感”のあるように、あえて天井を下げて2.1mに。床を変化させることで、お互いの気配を感じながらも独立性を確保することができるという提案です」。
来場される方が、決まっていう言葉。それは「明るい」というもの。都市型であっても、プライバシーに配慮しながらも、開放的で光をしっかりと空間に採り入れることのできるアイデアは、「ぜひ採用したい」と異口同音に発せられるそうだ。

「明るさと空間の広がりと景色。この3つを意識して設計したことが評価されているのだと思います。都市の場合、見せてはいけない外部環境も多くあります。その取捨選択が、都市型住宅を設計する際の重要なファクターです」。

一級建築士 海老沢陽平

一級建築士 海老沢陽平

「外からくる“いいもの”を、室内デザインとやさしく融合させる」

設計においてのこだわりは2点。ひとつは周辺環境にしっかりと配慮した住まいをつくること。そしてもうひとつは、光と風をいかに取り込むかということです。暮らしにとって、いいものも悪いものも、すべて外から入ってくると考えています。その中で、いかにいいものだけを取捨選択していくかというところに力点を置き、設計をしています。いくら室内のデザイン性を追求しても、外部環境とマッチしていないと気持ちのいい家にはなりません。外部環境との関係性を考え抜くことが、設計のすべてではないか。私は、そう考えています。