Interview | ディテールを語る

作品「FREX RESIDENCE 成城展示場」

スキップフロアによる天井高の
変化によって心からやすらげる、
豊かな暮らしを紡ぎ出す

一級建築士・デザイナー・荒川圭史

ラウンジやアウターリビング、ゲストルーム…。
人を招き、贅沢な時間を共有する空間

重量鉄骨のシステムラーメン構造による特長的なラインナップを揃える、旭化成ホームズのヘーベルハウス。そのハイエンドクラスである「フレックス レジデンス」が、2013年5月、成城住宅公園に誕生した。設計・監修を手掛けたのが、同社、TOKYO DESIGN OFFICEのデザイナー荒川圭史氏だ。今回は、この成城モデルのコンセプトや空間設計におけるこだわりや思いを存分に語っていただいた。

「富裕層をターゲットにしたとき、どんな表現が求められ、そしてフレックス レジデンスではどんな仕掛けが可能なのだろうかと。ヘーベルハウスの天井高は2.4mが基本。ある程度、床面を下げることはできますが、高さ方向における変化にバリエーションを持たせることに少々難しい面がありました。そこで新たに開発された肉厚22mmの柱による、どの高さでも梁を架けることが出来る工法を用いることで、これまでにない表現の住まいを誕生させることを目指したのです」。

まずファサードに注目してみよう。これまでのヘーベルハウスは、マッシブなキューブ状のものが多かったが、成城モデルの外観は、ほぼ壁とスラブで構成され、水平ラインが強調されたフォルムが印象的だ。「線と面で構成することで、大きな建物でありながら軽やかさも感じられるデザインに仕上がっています」と荒川氏。

そして室内空間。1階のコンセプトは、「招く」だそうだ。主にパブリックスペースと捉え、靴のままくつろげるラウンジを中心に据え、アウトセットで全開放にすることでアウターリビングとも一体となる開放感あふれる空間を演出した。エントランスドアは“招く”を具現化した内開きに。またバスルームも備えるゲストルームも用意されている。

「成城モデルでは、空間のボリュームと素材がよりかみ合うように心がけました。たとえばエントランス奥の立ち上がり壁は、よく用いられる割石調ではなく、床の大理石と同じ素材を小端積みで仕上げています。そうすることで素材が主張し過ぎず、空間バランスが取れていき、本当に上質な空間になっていきます。またシュークローゼットの扉には外部の壁仕上げをそのまま連続させた耐候性鋼を用いて重厚さを出し、空間バランスを保つ仕掛けも施しています」。

やわらかい光と影がくつろぎを生み、住まう人にやさしい気持ちを運ぶ

パブリックスペースが中心の1階の中でも、やはり住まう人がくつろぎ、楽しめる空間は必要だ。そこで荒川氏は、ガレージに着目。愛車を眺めながらグラスを傾けたり、趣味に没頭できるホームオフィス空間をつくりあげた。あえて天井高を96㎝下げることで落ち着きを生み出し、まるで秘密基地のような雰囲気を醸し出すことに成功している。また、この空間のもうひとつのポイントは、「壁をガラスにしていること」と荒川氏はいう。そのことにより、上階を見上げたときに3階部分までゆるやかに視線がつながり、開放感と空間の変化を楽しむことができるというわけだ。

段板がLAMINAMという厚さ3mmのタイルで仕上げられた階段を上がると、そこには35.3帖のリビングが広がる。天井高3.36m、スパンが6.4mの圧倒的な大空間。さらにスキップフロアを上がれば、41.4帖のキッチン・ダイニングスペースが待ち受けている。

「リビングの天井高が3.36mで、スキップフロアを上がれば一旦、2.4mになり、さらに進むと5.27mの吹き抜けとなります。クリストファー・アレグザンダーは、『すべての天井高を同じにすると、事実上、居心地の良い建物にはならない』と述べていますが、まさにそれを実感できる空間に仕上がっていると感じています。吹き抜け空間から見た階段スペースは、階段を彫刻に見立て、絵画的に取り込もうと考えたもの。そこからこぼれる光と影が奥行き、距離感を感じさせ、居心地のよさを生み出すひとつの要因となっています。一方、すべてをガラス張りで見せていないのは、南面から差し込む自然光を受け止めるリフレクターとしての役割を壁に持たせたから。一度、光を壁に当てて、それがダイニングに跳ね返ってくる。やさしい光に包まれることで、心地よさはさらに増します」。

3階は、プライベートスペースとして設計。床はカーペット仕上げにし、ベッドルームの壁はフトン張りを施すことで、やわらかな雰囲気が演出されている。ドレスルームでは、“見せるクローゼット”を造作し、エンスウィートバスには、美しいバスタブが鎮座する。さらにその横には、バスコートと呼ぶにはあまりにも豪華なプライベートベランダが続き、まさに空中庭園にいるような贅沢なひとときが満喫できる。

「ヘーベルハウスがこれまでにご提案してきたスカイウォールを成城モデルにも設けました。人の背丈ほどの壁で外周を囲むことで、光があふれ、風に包まれる天空のテラスを生み出し、同時にプライバシーもしっかりと守ります。外空間なのですが、室内と同じ感覚で過ごしていただけるように、水にぬれても問題のない素材を用いたやわらかな椅子を設えました。春や秋、夏の夕暮れや夜など、ここでのんびりと過ごしていただければ、より豊かな時間を手にしてもらえるのではないかと思っています」。

「ああ、ここはすごく心地いいね」。成城モデルに訪れる人々が、よく口にする言葉だと荒川氏。自分たちが建てる家はこれほど大きくないのだけれど、この気持ちよさはプラスしたい。そんな思いを、成城モデルは抱かせてくれるのである。

一級建築士・デザイナー・荒川圭史

一級建築士・デザイナー 荒川圭史

「なんだか心地いい、という皮膚感覚を住まいの形にすること」   

設計やデザインは、どうしても目から入ってくる情報が多くなるものです。もちろん住まいづくりにおいて、見た目の美しさは追求します。でも、私が本当に大事にしているのは「五感」。特に触覚、つまり皮膚感覚ですね。「この空間にいると、なんだか心地いい」という感覚。それを実現するための方策を考え抜くことが、私の設計思想です。どこから、どのように光が入ってくるのかを検証したり、周辺環境を調べたりする中で、得られた情報が重なり合い、ひとつの解となって現れる瞬間。そのときに新たなプランが生み出されます。

  • FREX RESIDENCE 成城モデル