Interview | プロダクトコンセプト

DORNBRACHT プロダクトコンセプト

宝石のように美しい水栓金具
ハイエンドの製品を
ハイエンドの顧客のために

Dornbracht Asia Pacific Limited
General Manager WOLFRAM QUAST

ドンブラハ、ジーガーデザイン、ミレーアンドミレーの3社で生み出す“驚き”と“輝き”

高級水栓金具メーカーとして世界にその名を轟かせるドンブラハ。個人邸はもちろん、トップクラスのラグジュアリーホテルにも多くの納入実績を誇る。そんなドンブラハのものづくりへのこだわりやブランド確立の歴史、そして今後の方向性などについて、同社のゼネラルマネージャーであるウォルフラム・コースト氏にお話を伺った。

「ドンブラハは、1950年にアロイス・F・ドンブラハが、ドイツ北部の小さな町であるイサローンにて設立した水栓金具メーカーです。当初はごく一般的な家庭用水栓金具を生産していましたが、現在ではラグジュアリーなデザイン性と高品質にこだわったものづくりを行っています。私たちの信念は、『変化を恐れず、常に革新し続けていく』というもの。そして『ものづくりにおいてデザインは犠牲にしない』というポリシーを守り続けています。すべての製品がドイツで生産され、ジャーマン・クオリティを担保しているのが自信であり、誇りでもあります」。

「デザインにおいては、製品設計をミリ単位で行い、仕上げとして電解メッキを施しています。2009年~2010年にかけて工場をすべて建て替えましたが、その際にこれまで培った電解メッキ技術の粋を集め、システム化を行いました。特にプラチナ仕上げ、金メッキ仕上げ、クローム仕上げに関しては世界でもトップクラスの技術を誇りますし、ロボットによるメッキ作業は業界広しといえども弊社だけ。複雑な形状のものやメッキが乗りづらい形状のものにもロボットを使用することによって安定的に高品質な製品を生み出すことに成功しています」。

デザインを最優先に考え、そのデザインを具現化するためにはどうすればいいか。意匠にも技術にも一切の妥協を許さず、歩み続けていくことこそが、ドンブラハのものづくりのコンセプトだと語るコースト氏。では、そんな確固たるスタイルを確立するまでには、どのような歴史があったのだろうか。

「最初にも述べましたように1950年の創業当時は、ごく一般的な水栓金具を生産していました。しかしその後、大量生産の時代を迎える中で、弊社は大きな舵を切ります。1969年に初めてデザイン重視した商品「2000」シリーズを発表。これは水栓金具にデザインという概念を持ってきた画期的な製品で、大反響を呼びました。そしてザ・リッツカールトンなど高級ホテルに数多く納入されることになったのです」。

高級水栓金具メーカーという地位を獲得した同社は、さらなるブランド確立に向け、1980年代に大きな2つの決断を行う。ひとつは「コンテンポラリーデザイン」の追求。そしてもうひとつは、ものづくりにおける「パートナー企業と連携」だ。

「製品づくりにおいては、常に市場に新鮮な驚きを与える近代的なデザインに特化することを決めました。そしてそのデザイン、マーケティングにおいては自社で完結するのではなく、デザイナー集団である『ジーガーデザイン』社とマーケティングを担当する『ミレーアンドミレー』社と連携し、どのようなタイミングでどのような製品を世に送り出すべきかを検討・判断するスタイルを確立したのです。1社ではどうしても近視眼的な発想になりがちです。生産のドンブラハ、デザインのジーガーデザイン、そしてマーケティングのミレーアンドミレーと、それぞれのスペシャリストの英知を結集したものづくりをすることで、私たちは世の中に高付加価値を送り出すことに成功しているのです」。

25年以上、このスタイルでものづくりを行ってきたドンブラハ。ジーガーデザインが一貫してデザインを担当することで、たとえまったく異なる製品を生み出したとしても、根底には共通した哲学が宿り(同社では、Constant・Design・Languageと呼ぶ)、ミレーアンドミレーによって効果的に建築家やデザイナーにアプローチしていくことができる。パートナーと一緒にその時代の文化や背景などを取り込んだ形でコンセプトをつくっていくことがドンブラハのアイデンティティであり、進化の歴史なのだ。同社の着実な歩みは、ドイツ国内で発表されているラグジュアリービジネスレポート(ランキング)において、すべての業界も含めたうえで第2位ということからも、その高い評価・成功が伺い知れる。

デジタル化によって、ラグジュアリーな暮らしを演出し、革新をもたらし続ける

「たとえば2014年6月開業のアンダーズ東京、9月開業予定のWホテル北京など、多くの5つ星、6つ星ホテルにて、ドンブラハの製品が採用されています。おかげさまでヨーロッパはもちろん、アジアを含めた世界中の個人邸・ホテルなどで高い評価をいただいています。ユニークな例でいうと約30年前に、中国で初めての高級ホテルが広州にオープンしましたが、そこにもドンブラハが採用されており、現在、改修中なのですが、再びドンブラハの採用が決まっています。ホテル以外では要人の旅客機や客船、クルーザー、個人ニーズではミュージシャンや俳優、トップアスリートの自宅・別荘など枚挙にいとまがありません」とコースト氏。そんな高い評価を受け続ける同社の次なる提案についてとの問いに、『Warmth(温かみ)』と明快に答えてくれた。

「今年の3月に“Cyprum”というシリーズを発表し、全世界でPRを開始しています。今、建築家やデザイナー、そして人々が求めているのは“温かみ”が感じられて“高級感”があること。そんな背景から弊社では、18金と銅を混ぜたメッキを製品に施した“Cyprum”シリーズを誕生させたのです。名前の由来は、キプロス共和国(Cyprus)。ここは紀元前から銅山で有名で、当時から鍋などのあらゆる製品に銅が用いられていました。この歴史・文化から着想し、“Cyprum”という造語を生み出したのです。実は2005年に開催されたミラノ・サローネにおいて、TOM DIXONによる銅を使用した作品に注目が集まり、電気や熱伝導の良さ、抗菌性、加工性などの特性も相まって、インテリアデザイン業界において素材のひとつとして認識されるようになったという経緯があります。その流れを受け、ドンブラハでもこの銅っぽいローズゴールドの仕上げを提案しているわけです。建築家やデザイナーからの評判、フィードバックはかなり良く、手応えを感じています」。

そんなドンブラハは、今後どのような方向に進んでいくのであろうか。水栓業界においてのトレンドリーダーであり続けるための次の一手は、どのようなものになるのか。

「現在、3つの大きな流れがあると感じています。ひとつ目は人口の変動、高齢化ですね。ふたつ目はサステナビリティ(持続可能性)・エコロジー、そして三つ目はデジタル化です。高齢化に対応するためには、もっと簡単に楽に使える製品を生み出していく必要があるでしょう。サステナビリティについては、ものづくりにおいて限られた資源を有効活用し、リサイクルにもより注力していく必要があります。もちろんそれだけではなく、流行に左右されず、長く使っていただける普遍的なデザインを追求することで結果的にエコロジーにつながると考えています。先ほどご紹介した広州のホテルの例は、まさに私たちの考えるサステナビリティです」とコースト氏。

「デジタル化については、世の中にパソコンやスマートフォンなどが普及していく中、バスルームにもこういったデジタル製品が将来的に増えていくと考えています。それは単なる電化製品という位置づけではなく、たとえば健康管理をしていくとか、高齢者にとっての使いやすさを追求するとか、新しい機能を追加するということも含めてのデジタル化です。最新のモデルでは、入浴時のスタイルを個々にプログラムすることができます。最初は〇℃のお湯を〇分浴びて、そのあとに冷たい水で身体をシャキッとさせる…。マニュアルであれば何度もボタンを押し、温度設定をやり直さないといけませんが、個人のプログラムを設定しておけばボタンひとつで再現できます。ドンブラハが考えているのは、こういうリラックスタイムのサポートも含めてのデジタル化です。スマートフォンと連動させ、音楽を聴きながらシャワーを浴びる。照明を効果的に演出する。バスルーム周りは、すべてデジタル化していくとドンブラハは確信していますし、その方向性に向かって歩みを進めます」。